状態変化とエネルギー 

蒸気圧と沸騰】

気液平衡(蒸発平衡)

密閉容器に液体を入れて放置すると,液体の一部は蒸発する。また,蒸気の一部は凝縮し再び液体に戻る。つまり,このような容器の中では蒸発と凝縮が同時に起こっている。蒸発する分子と凝縮する分子の数が等しくなると見かけ上,蒸発・凝縮が起こっていない状態になる。この状態を気液平衡(蒸発平衡)という

 

飽和蒸気圧

気液平衡の状態における蒸気が示す圧力を飽和蒸気圧または単に蒸気圧という。液体の温度を上げると,液体から気体に移る粒子が増え,その温度で新たに気液平衡の状態をとる。このとき,気体になった粒子が増えるので,蒸気圧は高くなる。この変化を示したグラフを蒸気圧曲線(左下)という。

 
 

蒸発と沸騰

蒸発も沸騰も液体から気体への状態変化(気化)である。蒸発は沸点以下のどの温度でも起こる。液体の表面を押さえつけている力は大気圧で,沸点以下の液体の蒸気圧は,大気圧よりも低いので仮に液体内部で気化し,気泡ができても大気圧につぶされてしまう。そのため,蒸発は活発な分子が液体の表面からのみ気化する現象である。一方,沸騰は液体の蒸気圧が大気圧と等しくなったときに起こる。蒸気圧が大気圧と等しくなると,液面を押さえつける力がなくなるので,内部からも気化が起こる。沸点(沸騰するときの温度)は蒸気圧と大気圧が等しくなるときの温度といえる(右上)

 

【状態変化とエネルギー】

 物質は温度,圧力を変化させることで状態変化が起こる。右下の図は水の状態図ある。水の特徴は融解曲線の傾きが負であるということである。一般の物質では,融解曲線の傾きが正になる。また,臨界点は液体と気体の変化が起こる圧力と温度の上限であり,臨界点以上では,液体と気体の区別がつかない状態(超臨界状態)になる。

 
 

例題

 左下の図は,物質ACの蒸気圧曲線である。これをもとにして,次の各問いに答えよ。

(1) 最も沸点の低い物質はACのうちどれか。

(2) 分子間にはたらく力が最も強い物質はACのうちどれか。

(3) 大気圧が600hPaの場所では,Cは何度で沸騰するか。

(4) B60℃で沸騰させるには,外圧を何hPaにすればよいか。

(5) 20℃で,1013hPaから外圧を下げていったとき,最初に沸騰する物質はACのうちどれか。


(1) A  (2) C  (3) 85℃  (4) 470hPa〕  (5) A


   

例題

 1molのある固体物質をなめらかなピストンつきの容器に入れ大気圧(1013hPa)下で,毎分一定の熱量が加わるように加熱した。右上の図は,このときの,加熱時間と温度の関係を示したものである。次の各問いに答えよ。

(1) 次の粒子の状態はそれぞれ,どの状態かa eで答えよ

  @ 熱運動が激しく広い空間を飛び回っている。

  A 一定の体積中を動いている。

  B 分子間力の影響がつよく,一定の位置で振動している。

(2) bdで温度上昇がみられないのはなぜか。

(3) どのような条件で行えば,T2の値を下げることができるか。

(4) ABを比較したとき,分子間の平均距離はどちらの方が大きいか。                    

(5) 融解熱をQ kJ/mol〕とし,Qt1t2t3t4T1T2のうち必要なものを用いて,蒸発熱〔kJ/mol〕を表せ。

(6) 一般に,融解熱よりも蒸発熱の方が大きい。その理由を説明せよ。

 


(1) @ e  A c  B a

(2) 融解や沸騰の状態変化に熱が使われたかから。

(3) 圧力を下げる(固体の表面に加わる力を小さくすると粒子が動きやすくなるから。)

(4) BAは液体Bは気体だから)

(5) Q × (t4t3)(t2t1) 

(毎分一定の割合で加熱しているので,熱量は時間に比例する。)

(6) 粒子の結合を緩めるよりも,切る方がよりエネルギーを要するから。


例題 
 図は,水の状態を模式的に表したものである。下の各問いに答えよ。ただし,大気圧は1013hPaとする。


(1) a点の温度の値が100のとき,圧力Pの値はいくらか。

(2) 領域Uから領域Tへの状態変化(A),領域Vから領域Uへ
 の状態変化(B),および領域Tから領域Vへの変化(C)の名
 称をそれぞれ記せ。


(3) 水に圧力を加えると沸点はどのように変化するか。

(4) 氷に圧力を加えると融点はどのように変化するか。

 

(5) 点bを何というか。また,点bでは,水はどのような状態で存在するか。

(6) 二酸化炭素の状態図を示せ。

 

11013hPa  (2(A)凝固 (B)凝縮 (C)昇華  (3)高くなる(左下) (4)低くなる(左下) 

5)三重点(固体,液体,気体が共存する) 6)融解曲線の傾きを正にする(右下)